コラム

 日本において在日外国人が増加している中、イスラーム教を信仰する人々であるムスリムも日本においてその数を増やしている。店田(2021)によれば、1990年12月末時点での日本におけるムスリムの推計人口は、外国人ムスリムが約2万7,000人、日本人ムスリムが約2,000人、合計して3万人弱であった。2020年12月末時点では、外国人ムスリムが約18万5,000人、日本人ムスリムが2万7,000人、合計で約23万人となっている。この推計によると、20年間でムスリムの数は7倍以上になっていると考えられる。このことから、現在もムスリムの数が増加していることが予想される。

 このように日本においてムスリム人口が増加した理由の1つに、1980年代から1990年代のイスラーム系のニューカマーと言われるイラン、バングラデシュ、パキスタンという3国出身者の流入が挙げられるだろう。彼らは日本と各国間のビザの相互免除協定により来日し、日本で働くことを目的にした者が多かったとされる。その中には日本で家族を持ち、さらに日本で子どもを育てる者もいた。現在は、彼らの子どもの世代も高校生や大学生などの段階まで成長し、日本社会で生活をしている。

 また、「在留外国人統計(旧登録外国人統計)統計表」の2022年版を見ると、2022年12月時点での在留外国人の人数は、イラン人が4,237人、パキスタン人が2万2,118人、バングラデシュ人が2万2,723人となっている。さらに、国民の64%がムスリムのマレーシア、イ国民の86.69%がムスリムであるンドネシアに関して、マレーシア人は1万1,045人、インドネシア人は9万8,865人が日本に居住している。上記5か国出身者の日本における分布を見る限り、彼らは主に首都圏や、関東圏や愛知県、関西地方など工場の多い地域に居住していることが多い。また、インドネシア人に関しては全国に居住していることがわかる。

 このように、各県にムスリムと考えられる人が居住しているという状況がある。そのため、モスク建設にはじまり、地域の理解や学校・職場での対応、イスラーム墓地の建設など、「ムスリム観光客」のためだけではなく、長期的に日本に居住する「在日ムスリム居住者」のための対応も必要とされているのではないかと考えられる。          
         

写真は代々木上原近辺にある東京ジャーミィ(筆者撮影)


参考文献

    

(執筆者:山口友理香)

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